10.切なくて甘い夜

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「そういえば腹減ったなあ。江波は?」 「わたしは食べてきたんだけど。なにか食べにいく?」 「こんな時間だし、ここら辺はコンビニかラーメン屋ぐらいしかないんだよなあ。それに今から外に出るのかったるいし」 「ならデリバリーにする? ピザだったらこの時間でも大丈夫だと思うよ」 「そうするか。この間頼んだときのチラシは……」  太一はそう言って立ち上がる。  けれど部屋の中を探しながらも、ときどきさりげなく新聞や雑誌を積み上げ、床にある服をかき集めていた。 「おかしいなあ。どこに置いたんだっけ」 「探すっていうより部屋を片づけているんだけど」 「しょうがないだろう。出張前日も忙しかったし、帰ってきてからもバタバタしてたんだよ」  ぶつくさ言っている太一を横目に、志穂も一緒にチラシを探した。  その時。 「あっ……」  志穂はリビングの隅に無造作に置いてあった紙切れを見つけてしまった。 「あったか?」 「……う、ううん」 「そっか。でもまあいいや。時間の無駄だからネットで調べるよ」  志穂はなにかが違うと思った。彩が言っていた「会わないで」という言葉を思い出し、その意味になんとなく気づいてしまった。
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