4282人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんな決め方、間違ってる」
「どうせ江波にはわかんねえよ。俺が今までどんな思いで過ごしてきたか。やっとなんだよ、やっとこうして一緒にいられるんだ」
「そんなふうに思ってもらえるのはすごくうれしい。だけど太一の会社は完全成果主義でしょう。チャンスを捨てちゃだめだよ」
怒鳴ってはいけない、諭さなくては。ここで人生を踏み誤らせては絶対にいけないんだ。
志穂は自分にそう言い聞かせながら、太一を必死に説得した。
「行ってきなよ」
「でも俺たちは、まだはじまってもいないんだぞ。こんな状態で行けるかよ」
「そんなことないよ。わたしはちゃんと好きだよ、太一のこと。会えない間もずっと太一のことを考えていたし、彩さんになんと言われようと自分の気持ちを貫きたいって思ったからここにいる」
志穂は思いの丈を太一に打ち明けた。太一の手を取り、ぎゅっと握る。
最初のコメントを投稿しよう!