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「でも俺のわがままで……。本当は東京についてきてほしいって言いたいけど、俺はまだそこまでじゃないし……」
「わたしのことはいいよ。太一がやりたいようにやればいい。わたしは太一を応援したいの」
志穂は太一の目を見据え、きっぱりと言った。
これが今の自分たちにとって一番いい選択なのだ。
思いが通じ合った途端に離れ離れが決定というのも皮肉だが、志穂も社会人二年目になって仕事への興味が前にも増して大きくなり、太一の仕事に賭ける情熱はなんとなくわかる。
「今以上に忙しくなって、こっちに戻ってこられないかもしれないんだぞ」
「だったら、わたしから会いにいく。大丈夫、東京まで新幹線であっという間だよ。なにも大変なことなんてない」
本当は離れたくなかった。
やっと自分に素直になれたのに、簡単に触れられない距離になってしまうなんて、今すぐ泣きたいくらいだ。
だけどさみしいなんて言っていられない。大事なのは太一の今と将来だ。
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