10.切なくて甘い夜

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 身体が上下入れ替わるたび、主導権も入れ替わる。  志穂を組み敷いた太一が言った。 「女にリードされるのは嫌いなんだよ」  なんだかそれが太一らしいと思ったら急におかしくなって、ちょっとだけ笑ったら、痛いくらいに首筋に噛みつかれた。  でも痛みすら愛おしく感じる。  そして次第にその痛みは甘さを含んだものになり、志穂はくすぐったさに首をすくめた。  完全に服を脱がされてからは、太一の手のひらと唇が、頭のてっぺんからつま先まで丁寧に触れてきて、全身がとろけていく。  肌の密着感も心地いい。「志穂」と名前を呼ばれるたびに、身体の奥に灯った小さな欲望もどんどん大きくなって、無我夢中で抱かれた。 *  静かな寝室は、月のやわらかい光に包まれていた。 「泊まってくよな」 「うん」  ベッドの中で裸のまま、お互いに寄り添う。  さっきまでの激しさとは打って変わって、穏やかな時間だった。
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