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「桜、咲いたね。川沿いの遊歩道の桜もすごくきれいだったよ」
「そうなんですね。今度、会社帰りに寄ってみようかな」
「満開は来週頃みたいだよ」
今日も他愛もない会話を交わす。
用事をすませるとさっさと総務部を後にする人が多い中、こんなふうに志穂に話しかけてくれるのは宮下ぐらいだ。
「よろしく」と宮下がエレベーターホールに向かうと、志穂は預かった書類を外出中の総務部長のデスクに置いて自分のデスクに戻る。すると今度は隣のデスクの進藤千晶(しんどうちあき)から声がかかった。
「サーバーのメンテナンス契約なんだけど、来月更新する会社に請求書を発送してほしいの」
「この間、話していた件ですよね」
「そう、来週はじめには発送できるようにね」
「わかりました。請求書は今日中に作成しておきます」
志穂が返事をすると、千晶はパソコンのディスプレイに視線を戻した。
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