1. 再会は同級会で

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 志穂は東京の四年大学を卒業後、生まれ育った地元にUターンしてこの会社に入社した。総務部に配属されて一年となる。  総務部といっても大企業とは違い、経理や人事、そのほかの雑用もすべてこなす部署だ。  もちろん総務部の中で仕事は分担されているが、仕事をひと通りこなせるように、入社後数年は様々な仕事がまかせられる。  それなりにいい会社だとしても、地方の中小企業はそんなものだ。  千晶は一年先輩で、年齢もひとつ上。志穂が新入社員時代の教育係で、志穂にとって社内で一番仲がいい。 「言い忘れてたけど、請求書の日付は必ず各社の締め日に合わせてよ。必着日も守ってね」 「はい」 「それじゃあ、わたしは営業部に行ってくるね」  営業部は五階にある。千晶は書類を持って席を立つと、ボブの髪をふんわりと揺らして総務部のフロアを出ていった。  千晶はとても頼りになり、まだおぼつかないところがある志穂に的確なアドバイスをくれる。たまに厳しいことも言うが、志穂にとって心を許せる女性でもあった。  そんな千晶のうしろ姿を見送ったあと、志穂はさっそく仕事に取りかかる。  パソコンで顧客リストのファイルを開くとそこからリストアップし、一件一件確実に請求書を作成していく。  絶対に間違いの許されない作業。もちろんすべての作業に言えることだが、薄い紙切れ一枚に数百万、ときにはそれ以上の桁違いの金額を打ち込むので神経を使う。
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