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定時から一時間が過ぎていた。おおかた作業を終えた志穂は急いでパソコンの電源を落とすと、帰り支度をはじめた。
今日は中学時代の同級会がある。
同級会の開催は卒業して以来だった。志穂は地元の成人式にも参加していないので、みんなに会うのは八年ぶりとなる。
期待と不安が入り混じった心境で、志穂は駅前の飲み屋街にあるアジアンダイニングへ向かった。新入社員の歓迎会の時期でもあって、駅前には真新しいスーツ姿の人たちもたくさんいた。
一年前の自分と重なる。去年の今頃は自分もあんな初々しかったのだろうかと、志穂はふと懐かしい気持ちになった。
店に着き、意を決して重たい木の扉を開けると、「いらっしゃいませ」と迎えられた。と同時に、スパイスの香りとガヤガヤとした店の雰囲気に圧倒されてしまった。
この店は初めて訪れる。そのため志穂は勝手がわからず、きょろきょろと店内を見まわした。
店内はオシャレで開放的。アジアンチックの内装は南国のイメージで、小さめだが本物のヤシの木がいくつも置いてあった。
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