1. 再会は同級会で

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「へえ、そうなんだ。わたしは総務部だから専門的なことは詳しくないの。でも優菜ちゃんの会社は知ってるよ。かなりお世話になってるよね」 「世間って狭いね。まっ、東京に比べたらかなり田舎だから、これくらいの偶然はたいしたことじゃないけどね。それに志穂の会社は大きいし、知らない人なんていないよ」 「うちの会社自体は大きくはないよ。ただバックにある会社が大きいから、そのおかげ。なにもなかったら、生き残るのは厳しかったんじゃないかな」  優菜の言う通り、志穂の勤める会社は地元でも優良企業と言われ、就職活動中の学生にも人気が高い。年に数回行われている会社説明会は毎回定員オーバーで、追加日程を組まないと追いつかないほど。  志穂がこの会社に就職できたのは奇跡に近い。東京のそこそこ名の知れた大学だったことと、大学の授業とは別に独学で学んだ簿記や秘書検定などの資格のおかげだったのかなと志穂なりに分析していた。  優菜はテーブルの上に置いた右の手の甲に左手をそっと重ねた。  見ると左手薬指にはシンプルなプラチナの指輪。真新しいマリッジリングだ。 「優菜ちゃんって、もしかして結婚したの?」 「うん、二ヶ月前に」
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