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「俺さ、江波みたいな女がタイプなんだよ」
「え?」
「中学の頃から好きだったんだよ」
太一は口角を上げて、ご機嫌な様子だった。
さりげなく告白されて、志穂は一瞬、なにを言われたのか理解できなかった。
「またまた、冗談言わないでよ」
「マジで好きだった」
「からかわないで」
「からかってないよ」
「なんで今さら?」
過去にそれなりの数の女性とつき合ってきたのは写真を見てわかった。だから、今さらというのは素朴な疑問だった。
「こっちに戻ってきてたの、知らなかったんだよ。東京の大学に行ったことは知ってたんだ。だからてっきり、そのまま向こうで就職するんだと思ってた」
「そうじゃなくて。中学のときはそんな素振りなんてなかったでしょう?」
「それはしょうがないだろう。あのときはまだ子どもだったんだよ。江波だって俺のことをガキ扱いしてただろう。人が気にしてんのに、俺の鼻の頭のニキビを指差して大笑いしてたのはどこのどいつだよ?」
「ああ! あったあった。そうそう。鼻の頭に真っ赤なニキビができたんだよね。あれ、可愛かったね」
志穂は自分がおかれている状況をすっかり忘れて大笑い。変なところでマイペースさを発揮するやつだなと太一はあきれていた。
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