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「なあ、教えろよ」
太一の真剣な顔が目の前にあった。志穂はこれからの展開を想像する。
まさか太一とだなんて信じられない。信じたくない。きっとふざけているだけだ。
でも太一の表情がそれは違うということを表していた。
手を伸ばし志穂の肩に触れようとしている。
そして言葉を続けた。
「答えられないんなら、俺から試してみていい? 俺のこと、好きにさせてみせるよ」
太一は逃げらないように志穂の両肩をがっしりと掴んだ。
志穂は身体をひねるが、びくともしない。そうこうしているうちに吐息が首筋にかかった。
「太一? あの、忘れ物は? 忘れ物を取りにここに来たんだよね?」
一刻もこの部屋から立ち去らないといけない。
志穂は太一が車の中で言っていたこと思い出し、なんとか声に出す。
それに、もしかすると冗談だよと笑い飛ばされるのかもしれないと、わずかな望みも持っていた。
「あれは勘違い。忘れたと思っていたけど、ちゃんと自分で持っていたから」
太一は目を細め、楽しげに言うと、パンツのポケットからなにかを取り出した。手にしていたのは郊外に新しくできたアミューズメントパークのチケットが二枚。
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