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優菜は満面の笑みで、手の甲を志穂に向けた。幸せオーラ全開で、薬指のプラチナもそれに比例して輝きが増して見える。
そこに自然とほかの人たちも加わり、その場が盛り上がった。みんなが結婚相手はどんな人なのかとか、つき合ったきっかけを矢継ぎ早に質問する。
優菜は、「同じ会社の人なの」と頬を赤らめた。相手は十歳も年上の人だったせいで、とんとん拍子に話が進んだそうだ。
高卒で就職した優菜にとって二十三歳での結婚は決して早いわけではない。しかし志穂にとって結婚はまだまだ先のことにしか考えられなかったので、かなりの驚きだった。
「社内恋愛かあ。うちの会社も多いぜ」
「嘘!? うちの会社には恋愛対象になる人なんていないよ。なんかみんなパッとしないの」
「そんなの、まだマシ。うちの会社なんてオジサンばっかだよ」
「うちはオバサンばっか。三十代後半の既婚者が最年少女子社員って、どんだけなんだよ」
男子と女子、それぞれのうらやましがる声や嘆く声が響いた。
志穂はそんな光景を不思議な気持ちで見ていた。中学時代、クラスの男女の仲はあまりいいとは言えなかったからだ。
例えばクラス対抗の合唱コンクールは練習をさぼる人が続出。練習不足でコンクール前日、担任だけでなく音楽教諭にまでこってりしぼられた。
また修学旅行の自由行動のときは、せっかく男女合同の班に分けたのに、多くの班が男女別行動をするほどだった。
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