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私は立ち上がって、ケンジの前に来た。
「そうよ。分かってる。私は時々人間じゃないのかなって思っちゃう」
私、変なこと言っているよね?
「半分正解。半分間違ってる。アサミは人間になりたかったんだ。そして人間になった。でも違和感があった。ということかな?」
ケンジは私の言葉を当たり前のように聞いている。
私がずっと人に言えなかった秘密を。
でもそれでも分からない。
何か私が生まれるずっと前のことをケンジは言っている。
そんな気がした。
「さっきから聞きたいと思っていた。ケンジは私の何を知っているの?」
「人間になる前からのアサミを知っている。アサミとしてこの地上に産み落とされる前からね。アサミは人間だから、忘れているんだよ」
だからかな?
ずっと前から知っているような、そして私は何か大事なことを忘れているって。
「ずるい。私は忘れているのに、ケンジは覚えているって」
「思い出したら人間じゃいられなくなるよ。不完全じゃないと人間じゃないんだから。だから無理矢理ボクから離れていったんじゃないか」
「人間は不完全だからケンジと私は離れたって? じゃあ私は欠けているってこと? 私の心に穴が空いているのはそういうことだって?」
相変わらず意味が分からないことを言っているけど、私の心に響いてくる。
なんかしっくりする。
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