彼は光の中から現れた

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「そうだよ。アサミは欠けているんだよ。ああ、アサミだけじゃないんだけどね。人間はみんな欠けている。みんな心に穴が開いていて、誰かと一緒にいないと寂しくなってくる。ボクとアサミが元々一緒でそれが完全だってことの名残だね」 「ケンジは哲学者だね。それとも詩人?」 言い得て妙。 あまりにも続くとそう思ってしまう。 「違うよ。事実を事実のまま話しているだけだよ。アサミは忘れてしまってボクと話が合わないから教えてあげてるんじゃないか。教えてもいいギリギリのところを考えながら」 ケンジはちょっと拗ねたようなそんな表情をした。 初めての表情に私はちょっと悪いかなという気持ちになってケンジの隣に座り直した。 「ごめん。からかっているわけじゃないの。正直、ケンジの言葉わけが分からないけど、間違っていないって、どうしてか分からないけど、そう思う」 「人間になっても、アサミを構成しているカタワレが覚えているんだね。人間としては失格だなあ」 「昔からそう思ったんじゃない。旅立ちたいと思ってからだよ。そんな風になったのは。目の前の風景が段々色あせてきたんだ」 そう、私は自分が人間ではないと思った。 本当の人間は、目の前で作られた単なるストーリー。 そう私が作ったストーリー。 私は母から生まれ、神に作られた被造物ではない。
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