彼は光の中から現れた

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「そうか。思い出してきたんだね。やっぱり人間になることに無理があったのかな」 今の言葉で完全に思い出した。 「そうだね。ケンジの言う通り、あなたと分かれてしまったから心に穴が開いた。その穴を埋めるために、もうひとつのカタワレを見つけて結びつけようと男の子を好きになった。私は毎日心が満たされた。心を通い寄せ、体を重ねて、どうにかしてひとつになろうとした。でも人間と私は一緒になれない。体をくっつけてもとけ合うことはなかった」 「そうだよ。だってアサミと合体できるのはボクだけだもん。ボクの替わりはいないんだ。だから言っただろ? 人間になるのは無理があるんだって」 水平線に太陽が沈もうとしている。 太陽は真っ赤に燃え、静かに揺らめいている。 海は夕凪でその動きを止め、優しく潮騒が響いていた。 「ケンジ……きれいでしょ? 頑張ったんだからね。あなたと一緒にいた時は、真っ暗な闇の中で何も聞こえなくて味気なかったよね。私は色を感じたかった」 「味気ないって随分な言い方だね。ボクと一緒にいるときは完全なんだから『無』なんだよ。形や色があること自体不完全なんだから」 「分かっているよ。だから分かれたんだから。不完全だから色があるし形がある。音がある。この綺麗な風景も、私を慰める潮騒も、不完全だからあるんだよ。素敵なことでしょ?」 私がこの世界を作った。 旅立とうとはしたけど、この世界は私の自信作。
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