1章 冷蔵庫の中のパイナップルパイを食べるまで

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雪が降る。 空から舞い降りる白い花びら達。 わたしは今日もサフラン色の屋根の廃屋の前で彼を待っている。 わたしは目の端にいつもの黒い人影を捉えて声をかける。 「あっ。おはよう!高坂(こうさから)くん」 「チース。中原(なかはら)先輩」 彼の名前は高坂悠珠(ゆず)くん。 三年生のわたしよりふたつ年下だ。 わたしは中原文音(なかはら.もね)。 私立架純(かすみ)高校三年生だ。 高坂くんはいつも黒いタートルネックに黒いスウェットパンツをはいている。 うらやましいくらい黒が似合うひとだ。 わたし達の学校は私服高校だけどわたしは翠色のジャンパーに黄色いワンピースを着込んでいる。 まるで信号機だ。(笑) その時始業チャイムが鳴った。
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