ライオン傭兵団編:episode05

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 半分位たいらげたところで、向かい側に誰かが立っていることに気づいて、キュッリッキは顔を上げた。 「こんにちは、お嬢さん」  端整な顔立ちの男で、やや険のある切れ長の目をしている。しかし、表情はとても優しく微笑み、どことなくヤンチャな印象を目元に漂わせていた。  ポケッと固まっているキュッリッキの様子に、男は面白そうにくすりと笑って椅子に座った。片方の手で頬杖をついて、キュッリッキに笑いかける。 「キミに仕事の依頼をしに来た。12時に会うと、約束をしただろう? ちょっと過ぎてしまっているが」 「あっ」  男の不思議な雰囲気にのまれ、キュッリッキは一瞬忘れてしまっていた。  優しい表情をしているのに、全身からは何か威圧的なものを感じる。見た目はまだ20代後半くらいで美青年なのに、周りの厳つい傭兵たちが竦むような迫力が滲み出ているのだ。実際周囲の傭兵たちは、マッチョな体格を縮こませて首を竦めている。でも、キュッリッキは怖く感じなかった。 「えと、お仕事は」  居住まいを正して切り出すと、男は横に小さく首を振った。 「道道話すとしよう。食事を済ませてしまいなさい」  穏やかに言われて、キュッリッキは頷くと、急いでスプーンを動かした。     
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