第二十章 沈黙の森 五

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「やはり、×であるのか……」  もしかして満千留は、黒川も超えて、今、一番神に近い×かもしれない。でも、短期間に食べ過ぎている感じもある。 「村は闇の中なのか……」  既に一週間が、闇の中ということになる。 「志摩の中ならば、村からも気付かれない筈だ」  慧一は志摩の仕組みを計算していた。志摩の中というのは、どこか村と類似していた。無限の空間に近く、しかし、光がない。村も、世界から隔離しているように、志摩の中も世界から隔離している。  志摩の中に俺がいると、俺が光であるために、どこか完全な世界になっていた。 「神なのか……」 「守人、取り敢えず眠っていよう。まだ、戦闘も先になる」  俺達が起きていると、志摩が疲れてしまうらしい。  志摩は洞窟で、自分の殻を作成していた。 「そうします」  志摩は肉塊でいる事を避けていた。だから、必死で殻を造っている。俺が協力できる事は、今は眠る事しかない。  夢でならば、光二に会いに行ってもいいだろうか。夢を見ると、光二は試験勉強をしていた。どこか、真面目な光二は、必死で大学にも通っていた。  俺のために、丁寧にノートも取っている。 「……光二」  俺は、不意に涙が落ちた。光二は、俺と離れていると衰弱してくる。でも、こんなに必死に勉強していた。光二は、俺が死んだとは思っていないのだ。
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