第二章 神袋 二

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 身代わりか。即席で出来るものもあるが、破られ易い。でも、レジに行き紙を取ってくると、簡単に人型に切った。それに名前を書き、身代わりにする。 「即席で作りましたけど、長くは持ちませんね……」  そこで、前に相談を受けた事のある、旗幟(きし)を思い出した。旗幟の姉は人形を作っていて、その人形は呪いの人形と呼ばれてしまっていた。似せて造った人形に、魂を繋いでしまうのだ。 「いい人を思い出しました。頼んでみます」  紙の身代わりを持たせると、説明の前に燃えてしまっていた。 「……燃やさないでよ……」 「いえ……そっちが何か仕掛けたのではないですか?」  田辺が怒るというよりも、驚愕していた。 「ただのメモ用紙でしょう。じゃ、ノートの切れ端を貰っていいかな?そちらの持ち物ならば、仕掛けもないでしょ」  今度は、田辺のノートで身代わりを作成してみた。しかし、田辺が持った瞬間に、今度は、溶けて消えていた。 「溶ける?」  身代わりを本人よりも弱く作っていたので、呪いの影響を受け易い。 「媒体が弱い」  紙に類似したもので、木がいいが、木製のものは少ない。机と椅子では持ち帰れないので、割り箸に身代わりを作ってみた。しかし、田辺が持った瞬間に、炭になっていた。  他に何かないのかと探してみると、サラダの器があったので、そこに田辺の名前を書いた。結構大きなものであったので、端から欠けているが、暫くは持つだろう。 「これを持っていてね」  しかし、大きな器であった。常に、身に付けていろというのは難しい。 「……呪いは、本物なのですか?」  少し真面目な表情で田辺が聞いてきた。 「俺は、幽霊も呪いも信じないけどね、身の危険を感じながらもそのままにしていて、一生の後悔をしたくはないよね」  犯人が×ならば、何を目的にしているのか知りたい。 「呪いも、交通事故も一瞬の隙だよね」  そこで、田辺が項垂れていた。 「この器を……」  器を持とうとすると、粉々に割れてしまっていた。 「……くそう」  力比べで負けるなど、守人として育った俺のプライドが許さない。俺は表にあったポスターを剥がしてくると、マジックペンを手に取る。  ポスターの裏に、人を現した図を描き、その周辺に世界の縮図を描く。そして、外周に守りの文字を書き、人の図を包むように折る。
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