第二章 神袋 二

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 守人は、村では人を守る存在であった。百年に一人の割合で生まれると言われ、×を消す光を持つ。  紙を包む時に、百円玉に光を込めて詰め、太陽としておく。 「五百円玉ではないの?」  五百円の方が大きく適切だが、財布に入っていなかったのだ。 「百円玉を、二枚入れました」  太陽だけではなく、裏に月も入れておく。この紙の包みを、力を込めて小さくする。そして、田辺が鞄に付けていたお守りの袋の中に詰め込んだ。 「これを破ったら相当ですよ」  そこで、愛菜を見てしまった。身代わりは弱い方に行く場合が多い。加護のない愛菜が、田辺と一緒にいたら、巻き込まれてしまう。 「……李下さん、何かコインはあるますか?」 「あるよ。先に聞いてよ」  李下は、日本国通貨ではないコインを出してきた。誤って通貨として使用しないように、異なる大きさがいいらしい。  俺はコインに、先ほどと同じような事柄を、細字で書き込んでゆく。簡易であるが、これも身代わりになる。どちらかというと、相手にこの人間が属する世界を知らせ、部外者を排除する働きがある。 「我、守人。この者達に近寄る闇を排除する」  ついでに、俺の誓いの言葉も詰めておく。 「あの、上月さんって、本当に祓い屋とかの類ではないのですか?」  愛菜が、恐る恐る聞いてきた。 「違います!」  俺は、きっぱり否定しておく。俺は、むしろ人よりも霊は見えないし、霊も感じない。 「でも、ありがとうございます!信じてくれて嬉しかったです!」  愛菜が笑顔になっていた。呪いに対する不安など、なかなか分かって貰えなかったであろう。 「帰ろう!田辺君」  田辺は不愛想ではあったが、最後に深く頭を下げていった。 「上月君、おもいっきり護符だよね、アレ」 「何か問題がありますか?」  李下は説明しかけたが、客が来たので中断してしまった。  五時が過ぎると、夕食を求める客が多くなる。この店は格安であるので、すぐに満席になっていた。店内が満席になると、テラス席を解放する。 「志摩、セットをお願い」  志摩は洗い物をしていたが中断し、トレーに器をセットしてゆく。レジはあるが、表の食券販売機でチケットを購入して貰っているので、会計はない。 「定食五個」  定食は、モーニングと同様に自分で持って行ってもらうが、ビールは冷蔵庫から出さなくてはいけない。
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