第十八章 沈黙の森 三

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 弁当の注文が多くなり、俺は容器に詰め始める。志摩も忙しく、多美も走り回っていた。やはり、弁当はいいが、多くなると手が回らなくなっていた。白河が、その他全般を引き受けてくれているので、かなり助かったかと思う。 「俺は、小田桐さんの家を出て自活したい。村から追放?されて、あれこれしていましたから、又、しっかり働きたい」  偉智は、×も人もあちこちで食べてしまっていたと聞くが、今はそんな悪の雰囲気も無くなっていた。 「小田桐に泣かれるよ」  しかし、小田桐が結婚したのは白河であり、偉智ではない。だから、偉智の意志も尊重したい。 「まずは、紗英さんが村で、身代わりを作成するというので、売ろうかと思います」 「どうやって売るの?」  インターネットで売るというので、つい暗黒世界の店舗を思い出してしまった。 「白河、夕方は空くでしょ?もう一軒、店をやる?」  暗黒世界で、身代わり人形を売って貰おう。 「いいですよ。今日にでも下見してきましょう」  そもそも、元凶はこの偉智であった。偉智の契約が生きてしまっているので、身代わり人形が必要になっているのだ。 「偉智は、人にかけた契約は切れないの?」 「契約は、終了するしか方法を決めていなかった。終了とは、俺の一部になって終わりですよ。でも、俺が封印されているので、契約は止まっている状態で、偶発的に発動するだけでしょう」  偉智にも、終了を決められなくなっているらしい。小康状態にはなっているので、既に奪われている部位が、突然消えるという状態になっていた。 「……身代わり人形が必要なのか」  偉智は、母親が処刑される前に、小舟に乗せて川に流した。それから偉智は、人里を避け隠れ住み獣を取って生き延び、その内に自分には形が無いという事に気付いた。母親の能力で、偉智は人型を保っていたが、次第にその影響が無くなってしまったのだ。  偉智は、何もかも恨み、憎み、沢山の×を食べてきた。そして、祖父に掴まり、地下に封印されていた。だが、封印は完璧ではなく、偉智は自分を分散させて逃げ出した。  偉智も、かなり激しい人生を送っている。  モーニングの時間が過ぎると、シフトを李下に代わり、俺は大学に行く。  大学に行き、いつも通りに、講義の席に座っていると、俺を遠巻きに人が見ていた。又、俺は何かしてしまったのであろうか。
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