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「そんな事件があってさ、事故物件に住んでいるという上月に興味が出た。それで、上月を見つけた」
電車は直ぐに降りる。でも、五十鈴の言葉を待ってしまった。
「消えた女の子はどうなったの?」
目の前で消えたのに、誰なのか、どこの子供なのかも分からなかった。その為、その後は分からない。
「分からないよ」
これは家には関係ないような気もするが、確かに引き取りたくない物件かもしれない。
五十鈴は、事故物件に住んでいる俺に声をかけたが、その後、この家の事を言う事はなかった。俺が、好きで事故物件に住んでいるのではないと分かったからだ。
だから、俺はこの家に事情を知りたくなった。
「分かった。廃材を貰っていいというのならば、その家に行ってみるよ」
電車を降りて、五十鈴に告げる。五十鈴は、笑顔になっていた。
「ありがとう」
この木材は嬉しい。志摩に取り込んで保管して貰い、屋上の家を田舎風に改造したい。
五十鈴と別れて駅を出ると、非常階段を登り、喫茶店ひまわりに行く。白河は真面目にバイトしていた。俺が白河に手を振ると、白河が笑顔になっていた。
白河が偉智だった時は、誰でも殺す凶悪犯のようであった。でも、こうして一緒に仕事をしてみると、普通の人のようにも思えてくる。
「店舗の下見に行こう」
俺が声を掛けると、白河はエプロンを置きながら、李下に声を掛けて走ってきた。
「李下さん。行ってきます!」
白河と並んで歩くと、白河も人目を引いていた。しかも、頻繁にナンパされる。
「可愛いね。男の子でもいいや、一緒に居酒屋に行かない」
「男の子でもいいや、は、嫌ですよ」
口説かれても、白河はさらりと流していた。華やかな笑顔で、嫌味もなく、白河は可愛い顔をしていた。
「白河はうまいね」
しかし、駅は初めてのようで、電車の乗り方を教えてしまった。
「便利ですね」
白河は電車に感動していた。この、素直な所は、白河の良い面であった。
「それと上月さん、見られているのは上月さんでしたよ。上月さん、見た目が可愛いのに自覚がないから、隙だらけです」
白河曰く、どちらかと言えば、俺は菓子かおもちゃで釣れそうな雰囲気があるという。そして、家に閉じ込められて監禁されるタイプらしい。
「守人様でもあったのでしょう。放棄しておいて正解ですよ。人攫いに遭うのが関の山ですよ」
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