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翔琉の方は、十代半ばという感じで、りりしい若侍のような雰囲気を持っていた。身長も高く、俺よりもあるのかもしれない。赤ん坊の満千留と二重人体というのは、無理があるのではないのか。
「ああ、闇は気持ちいい。やっぱり本音で言うとね、殺されなくて、ありがたいなど微塵も感じないよ。俺を殺そうとした世界を、皆殺しにしたいよ」
この二人はある意味、二重人体であった。満千留は無制限に食べ、翔琉は無限の闇産みで闇を輩出していた。この二人は、闇を産みだす一人の存在に近い。
「そうだ。守人様を喰いたいけど、守人様を喰ったら、もう光が来ない。光が無くなれば、闇も産めない」
この光というのは、太陽光とは違うらしい。だから、この二人は村でしか生きられない。
「では、この村の住人を全員食べて。守人様が住めるようにしようか」
「それはいいね」
この二人は、心が冷たい。そして、憎しみが殺戮衝動に変化してしまっていた。
「守人様、大切な人を守りにおいで……」
空中に向かって、二人が微笑んでいた。
志摩の中で、慧一は完全に眠ってしまっていた。もしかして、×ならばこの中で溶け込めるのだろうか。でも、俺は人で異物になっているのかもしれない。
「志摩……」
志摩の身体は川を流れ、海へと向かっていた。志摩が海岸にいたら、アメフラシかウミウシに間違われそうだ。
「守人さん」
しかし、俺の前に現れたのは、人の志摩であった。
「……志摩?」
顔を見ると志摩であるが、人の姿をした志摩を見るのは初めてであった。
「志摩、人の姿だね」
「そうですね。外の世界では、私の姿は守人さんの願いから出来ていますけど、ここは私の中で、私の世界なので、人の姿なのでしょう」
志摩は、俺よりも背が高く、モデルのような均整の取れた美しい姿であった。顔とややアンバランスな、筋肉もついている。腹筋なども割れていて、鍛えられていた。
「志摩は、成人男性だね」
どこか、俺と同じと思っていた。でも、志摩の身体は成人男性の逞しさも備えていた。
「守人さんの体は、まるで運動部の中学生ですけどね」
毎日、毎日、鍛えていたので、それなりに筋肉はあるが、成人男性のような逞しさは感じられない。
「守人さんの体は、しなやかで伸びがあって、野生の獣みたいだ」
志摩は全裸で歩いていた。周囲は暗いが、ちゃんと志摩は見えている。
「やっと、抱ける……」
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