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落書き
小学校高学年の頃、クラス内で落書きが流行った。
たいていは、教科書の偉人写真にあれこれ書き足したり、ページの隅に絵を描いてパラパラ漫画を作るという他愛ないものだったが、何人かがエスカレートして、休み時間のたびに黒板に絵を描いたり、掲示板のポスターなどに書き込みをするようになった。
それがきっかけで学校中に落書きが流行り、そろそろ事態がいたずらではすまなくなってきたある日、その苦情は舞い込んだ。
苦情を訴えてきたのは近くの神社の神主さんで、外壁にうちの児童と思われる小学生が、スプレー缶を使って落書きをしたというのだ。
絵柄などの特徴から、いたずらをしたのが誰か割り出せないかと、落書き現場の写真のコピーが配られた。でも、赤、青、黄色…何色ものスプレーが無駄に吹きつけられているだけで、絵とはとても呼べない、ただ壁を汚すことだけが目的のような落書きからは、犯人の目星はつけられなかった。
事が大きくなりすぎたため、学校やPTAだけでなく、地域全体が児童の動向に厳しくなり、落書きのいたずら熱はたちまち収束した。
そんなこんなで小学生時代が終わり、中学へ通うようになって半月程経ったある日、思わぬ訃報がもたらされた。
去年、同じクラスだった友達の自宅が家事になり、一人だけ逃げ遅れた友達が死んだのだ。
出火の原因は不明だが、火元はその友達の部屋辺りだったらしく、聞いた話では、本人の確認も難しい程黒焦げの状態で発見されたという。
けれど俺には、凄惨な訃報に気落ちする暇はなかった。
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