第1章 地下鉄丸ノ内線方南町駅二番出口

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 杜野秋(もりのあき)はいま、日本で二番目に古い地下鉄丸ノ内線の分岐線――車両が3両しかない(ホームの構造上の理由で、本線と同じ6両編成の車両がホームに入らないという理由から。だからといって、車両数を半分にして運行する理由も分からない)――中野坂上―方南町間の終着駅、方南町交差点を左手に、メガバンクと比較的大きな本屋が目の前に鎮座する、地下鉄丸ノ内線方南町駅二番出口に立っている。  クリスマスが終わるまでに遂行を完了すべく、あるミッションのためである。  多くの社会人にとって、天皇誕生日が週末になる今年は、国民の祝日・前夜・当日とクリスマスは3連休になる。  恋人同士はもちろんのこと、お祭り騒ぎ好きな若い世代や学生グループ、小さな子供のいる家庭など、さぞかし盛り上がることだろう。  女は基本イベント好きだし記念日好きだから、秋も以前は自身がノリノリで、特別な夜を演出してやったりしたものだ。その()のことは得意なのだ。  上から目線と言われようが、女たちは例外なく目をうるうるさせ、感激に頬を紅潮させ、頼んでもいないのに自ら服を脱いだ。 そんな彼女たちに秋が愛情を感じることはついぞなかったが。
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