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確かにそうかもしれない。
どころか、当人に正当な理由があれば、暴力行為の最終形を行っても罪に問われない――そんな世界がもし存在していたら、秋は迷わずそっちを選択しただろう。その方がずっと楽だったに違いない。
少年マンガにありそうな、バカげた架空世界を想像してしまうくらいには、秋の緊張は高まっていた。
とはいえ、いつまでもこうしているわけにはいかない。
このミッションは、クリスマスが終わるまでに完遂させるという時間制限が設けられているのだ。12月25日本日、午後11時59分59秒までと――。
ゴクッと喉を鳴らし、意を決した秋はいま一度、手前の定食屋まで歩を進めた。ついさきほどまで誰もいなかったのに、今は店先で寄せ植え用の特価品を物色している客がいる。店のドアが開いて、女性店員が出てくる。
ストレートの長い茶髪を一つに束ね、白いシャツに黒いパンツ、黒いエプロンを着けている。顔を見なくてもキレイ系だと判る。
得意客らしく、ざっくばらんな会話が秋のいるところまで聞こえてくる。
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