第1章 地下鉄丸ノ内線方南町駅二番出口

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 エレベーターで5階まで上がり、ホールを右に折れ、突き当たった先をさらに左へ折れて、一番奥の部屋のドアの前に立つ。  両手に下げた百貨店の紙袋のうち一つを足下に置き、インターホンを鳴らす。しつこく鳴らす。秋が根負けして応じるまで、悪魔のように鳴らし続ける。 「っせぇなぁ(怒)………ふぁい、どちら様!?」 「冬。寒いからさっさと開けて」 「……………………」  ドアチェーンが外され、カチリと解錠音がしてからドアが開くまで15秒以上。  ブーツ、スニーカー、クロックス、つぶれたサンダル、雪駄?、汚れた革靴などが、狭い三和土のあちらこちらに脱ぎ飛ばした状態で放置されている。  三畳ほどある台所の流し台と、反対側に位置するUB兼トイレの周辺にはゴミ袋がいくつも積まれ、どかしながらでないと何もできない。 すでに侵蝕の第二ステージに入っていると言えるだろう。  居室のカーテンが閉めっぱなしのため、部屋全体が薄暗く、ゴミが放つ悪臭と染み付いた煙草臭と缶ビールの残り香、少なくとも2、3日は風呂に入っていないであろう成人男性特有の体臭がミックスされて、鼻が曲がりそうな臭気が立ちこめている。  冬と名乗った女子高生は、部屋の主に一瞥もくれず、居室の掃き出し窓へ向かった。カーテンを開け放ち、窓を全開にする。
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