第1章 地下鉄丸ノ内線方南町駅二番出口

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 父も母も、いまの事態が好転して元鞘に戻るとか、妄想めいた結果を望んでいるわけじゃない。こうなる前の、ムダに自信家だけど家族や友人を一等大切にする、いつも愛されキャラだった兄に戻って欲しい、現状を取り繕うため自分にまで嘘をつき、その代償に苦しむだけの兄を少しでも助けられるなら――そう願っているだけなのだ。  辛いとき、頼りになるのは家族だけ……  ことは3日前、今週末はいよいよクリスマスという週明け日曜の深夜(正確には月曜)、泥酔した秋が実家の玄関の三和土で、奇妙な球体様の光る物体を抱え、 「恐竜の卵、落ちてた~。踏切ンとこでなんかペカペカペカペカ発光しててぇ~、何ですか新手のクリスマスイルミネーションですかどこもかしこもウザ過ぎっ! いろんな意味で危ないから~、杜野秋、拾って参りましたっっっ!!!」  さんざん笑い転げたあげく、それをそのまま玄関に放置、居間のソファで寝入ってしまった日までさかのぼる。
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