第2章 謎の発光生命体

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 翌日、秋が目を覚ましたとき、陽はすでに傾きかけていた。  起き抜けの脳は働くのを拒み、瞼は半分ぐらいまで開いて職務放棄、酒と煙草とおのれの体臭+線香と老人特有の辛気な臭いが、鼻腔にハーモニックにテロ攻撃をしかけてくる。  これによって中枢神経が全ストに突入、あたかも枷がつけられたような重い身体がますます重みを増していく。 「う、ぐぇ……キモチワル」  亀の甲羅よろしく掛け布団を背負った四つん這い状態から一気に脱力して、敷き布団にドサッと沈み込む。彼女(布団)なしでは、もう生きていける気がしない。  うつぶせに横になったまま、自分の置かれている状況、周囲の様子、昨日の記憶などを少しずつ手繰り寄せ、検証していく。  そうして、自分がいま寝ている部屋が、廊下を挟んで居間の真向かいにある、ちょっと前まで婆ちゃんが使っていた和室だと気づいた。どうりで。  秋がかつて使っていた部屋は二階。中学入学時にすでに父の身長を追い越し、日本人男子の平均身長を10cm以上上回る彼を、老齢に差し掛かった父が運べるはずはない。もちろん、母にもミニラ(妹)にも無理だ。   土嚢のように重い身体を叱咤して、ようやく布団から這い出たそのとき、襖がスパーンと勢いよく開き、仁王立ちになった謎の発光生命体が言った。
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