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その背中を、ホッと息を吐いて見つめる真鍋に、
「あの方は、どういった方なのです?」
高広は聞いてみる。
「とても、洗練された方ですね」
茶髪に茶色い目、容姿も整った龍一は、シンプルな衣装でもえらく様になっている。
龍一の本性を知っている高広は、口が曲がる気がするが、一応、客観的視点を加えて褒めてみた。
「それに美しい」
すると真鍋は、まるで自分が褒められたかのようにぱあっと表情を明るくして、
「そうなのです。あの方は、こちらにいらしてすぐに、教祖さまにその才能を見いだされ、異例の早さで幹部に抜擢された、たいへん優秀なお方なのです。本日の祭典でも大役を果たされました」
ためらいなく龍一を称えた。
龍一の人心掌握術には高広も一目置いている。
真鍋の言葉を要約すれば、教団に潜入するなり、教祖の女に取り入り、いち早く側近の地位まで登り詰めたということだ。
秘匿とされている教団の儀式を、目の当たりに出来る位置まで。
しかし龍一は、アレを止めようとはしなかった。
止めるどころか、一番近くにいて、ただ傍観していた。
人ひとり殺されるのを、黙って見ていた。
龍一の目的は、この教団の実体を探り、儀式をぶっ壊し、団体ごと壊滅させる 、そうではなかったのか。
まさか本気で『家族の幸せ』とやら追求して入信してきた?
……。
まさか――、
龍一の家族の身に何かあったのか?
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