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龍一は、
「ああ」
また言葉少なに認める。
その端正な顔には、わずかの感情の揺らぎも見えない。
高広は、
「……チッ」
舌打ちをして踵を返す。
話す気もすっかり失せて、
「勝手にしろよ」
調理場を出て行こうとした。
だが、
「高広」
そんな背中に、今度は龍一の方から声をかけてくる。
僅かの望みに振り返れば、龍一は、
「俺の邪魔をするな」
低い声で告げる。
「これは警告だ。俺の邪魔をすれば、お前も俺の敵になる」
高広は顎をあげると、まっすぐに龍一の目を見返した。
無力に殺される女を容認している龍一に、納得なんか出来るわけがない。
龍一の警告など承知出来るはずもない。
そういう想いで睨み返す高広の紫の瞳にさらされて、
「……」
龍一はフイと視線をそらす。
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