2.双頭の共命之鳥《ぐみょうちょう》

4/15

57人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
龍一は、 「ああ」 また言葉少なに認める。 その端正な顔には、わずかの感情の揺らぎも見えない。 高広は、 「……チッ」 舌打ちをして踵を返す。 話す気もすっかり失せて、 「勝手にしろよ」 調理場を出て行こうとした。 だが、 「高広」 そんな背中に、今度は龍一の方から声をかけてくる。 僅かの望みに振り返れば、龍一は、 「俺の邪魔をするな」 低い声で告げる。 「これは警告だ。俺の邪魔をすれば、お前も俺の敵になる」 高広は顎をあげると、まっすぐに龍一の目を見返した。 無力に殺される女を容認している龍一に、納得なんか出来るわけがない。 龍一の警告など承知出来るはずもない。 そういう想いで睨み返す高広の紫の瞳にさらされて、 「……」 龍一はフイと視線をそらす。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加