57人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
高広が調理場から出てスライド式のドアを閉めると、
「ああ、そこは立ち入り禁止ですよ」
ちょうど通りかかった他の信者が声をかけてきた。
高広は、
「すみません。昨日、来たばかりで迷ってしまいました」
愛想よく微笑みながら信者に答える。
高広の悪びれない態度に、
「昨日? ではあなたは、祭典に招待された方でしたか。それは失礼しました」
信者の方が腰を引いた。
高広は親しげに手を振りながら、
「いえいえ、こちらこそ、こんな場所まで入り込んで申し訳ない。少し人疲れをしてしまったようで――」
閉じたドアの向こうに、視線を向ける。
「中の方にお願いしたら、水をくださると、ここまで案内してくれたのです」
「中?」
高広に釣られるように、信者もドアに目を上げれば、
「!」
まるで盗み聞きでもしていたように、タイミングよくドアが開く。
当然、そこに立っていたのは、龍一。
最初のコメントを投稿しよう!