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龍一は信者に向かって深々と頭を下げる。
「勝手なことをして申し訳ない真鍋同士。しかしこの方は、高場秋広さまとおっしゃって、本日からこの本部に入ることを許された方です。少し気分が悪いとおっしゃったので、こちらで休んでいただきました」
龍一は高広の偽名を用いて紹介しようとする。
しかし、龍一の顔を見た真鍋は、
「ヴォルコフ同士、ここでしたか!」
龍一の言葉を最後まで聞こうとせず、龍一の腕を掴む。
「探していたのです。教祖さまが、ヴォルコフ同士のことをお呼びなのです。早く会場にお戻りください」
「いえ、しかし……」
龍一はチラリと高広の方を見る。
その顔には表情の欠片など一片も見えないが、高広にはわかった。
史上最高に、ムカついている顔だ。
高広が真鍋に接触したことが気に食わないのだろう。
もちろん、真鍋はそんなことには気づかず、
「高場さまは、私が案内します。同士は心配せずに、今すぐに教祖さまの所へ」
龍一の背中を押した。
真鍋にそこまでされて断るわけにはいかないらしく、
「……わかりました」
龍一は、真鍋に一礼してから、背中を向けて廊下を歩いていく。
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