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「ズルい、と思われますか」
真鍋は聞く。
高広は少し迷って、やがて重々しくうなずいて見せた。
高広の選択は当たっていたようで、真鍋はちょっとホッとした顔つきをして、高広に教える。
「でも高場さま、私たちがソレを悟れたことこそが、中嶋教祖さまの教えの本質なのです」
真鍋はどこか熱に浮かされたような目をする。
「中嶋教祖さまは、『信者全員を救う』なんて綺麗ごとは言わない。ごまかしは言わない。そこが他の宗教とは違うと思いませんか」
黙っている高広に、
「けれど、中嶋教祖に選ばれた者は、そう……、選ばれた者たちは、確実に『常世の世界』での幸福を約束される。確実に、ですよ。こんな素晴らしいことはない!」
「……」
「『常世の世界』では、運命の相手と共命之鳥として生まれ変わるのです。もう永遠に離れることはない……」
共命之鳥
聞き慣れない名前だが、これも迦陵頻伽と同じく、極楽浄土にいるとされる鳥の名前である。
真鍋の熱を邪魔しないように、
「真鍋さま、あなたの共命之鳥は?」
聞けば、真鍋はゆっくりと顔をあげ、少し寂しそうな眼差しで高広を見た。
「現世では、私が運命の相手、双頭の共命之鳥の片割れだと、いくら言っても信用してもらえませんでした。この世の価値観だとか凝り固まった概念が、彼の魂を縛っておいでなのです」
そこで自嘲気味に息をもらし、
「まあ当時は、私も教祖さまの教えを知りませんでしたから、もっと俗な言葉で告げてしまったわけですがね」
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