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3.鸚鵡《オウム》の戯れ言
『光の国』の通信システムは限られた者しか使えないが、高広が持ち込んだパソコンで外の様子は探ることができた。
トップにあがってきたのは、ひとりの国会議員が暴漢に襲われた、というニュースだ。
この議員、ジャーナリストが請求した情報公開に対し、その資料を隠蔽しようとしたとして、ここ最近マスコミから叩かれていた人物。
野党から証人喚問を求める声があがっていたが、体調不良を理由に入院し、表舞台から姿をくらませていた。
それが今回、襲われた。
「……これか?」
目立つニュースといえるのはソレだけだったので、高広は画面を見ながら首を捻る。
今回だけでなくとも、最近、政治家が暴漢に襲われる、という事件はたびたび目にしている。
犯行声明こそ出されていないが、相次ぐ物騒な事件に、テロリストが関与しているのではないかとの疑いももたれている。
日本を脅かす『テロリスト』ともなれば、あの有坂龍一が動くには十分な理由ではあるが、高広はどうにも納得できない。
第一、テロリストに狙われる前に、この国の政治家は無能者が多すぎる。
情報の隠蔽だったり汚職疑惑だったり、マスコミを騒がせない日はない。
そして襲われるのは決まって、最近マスコミを賑わせた政治家ばかりだ。
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