3.鸚鵡《オウム》の戯れ言

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だが、これまで襲われた議員の中に死人が出ていないことや、暴漢の未熟で稚拙な腕、無計画さ。 それに逮捕された実行犯同士に関係性が見えないことから、これらはそれぞれ別の事件だと考えられていた。 それほど、現在のこの国の国民は、政治家に不満を持っている。 そんな政治家が襲われる暴行事件と、龍一が現れた件を繋げて考えるのは、ちょっと無理がある。 しかし……、 高広はパソコンの画面をスクロールしながら考える。 政治家が暴漢に襲われた以外には、他に目を引くニュースは見当たらない。 今日を無視して、龍一が動くに値するニュースを探そうとすれば、 「こっち、なんだがなぁ」 某国のミサイル発射事件がある。 某国が国防訓練をうたって、日本に向けミサイルを発射したのは、つい二週間前のことだ。 結局ミサイルは、この国の上空を飛び越えて海に落ちたのだが、ほとんどの国民が持っていた携帯から警報システムが鳴り響き、国中が大騒ぎになった。 龍一が重い腰をあげるには十分納得がいくが、もしそうなら今ごろ、日本にいるわけがない。 本気でミサイル発射事件に関わりを持っているのなら、とっくに某国深くまで潜り込んでいるはずだ。 有坂龍一は、世界有数の腕を持つ秘密工作員なのだから。
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