1.迦陵頻伽《かりょうびんが》の詩

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やがて、女の歌が最高潮に達したまさにその時、 ――!―― 低い風切音がして、どこからか矢が放たれた。 クロスボウの矢は、鳥かごの中で歌う女の腹に突き刺さる。 「キャアアアアア!」 これまでのしめやかな声が嘘のような悲鳴あげて、女はもんどりうって倒れた。 しかし、矢は立て続けに放たれて、女の足といわず肩といわずに突き立つ。 「あああああ! やめて! 痛い、痛い、痛い……」 女は助けを求めるようにカゴの中を暴れ、柵に縋って両手をかけるが、その刹那、 「!」 放たれた最後の矢が、柵の間をすり抜けて、女の眉間に突き刺さった。 「――あ」 女は、涙の溜まった目をカッと見開くと、力を失い、ずるずると柵を撫でるように手を滑らせていく。 鳥かごの底に倒れた。
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