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化粧をし着飾ってはいるが、袖から覗く手や襟元に年齢が垣間みえる。
おそらく60歳前後。
中嶋陽光は、鬼子母神信仰に似た仏教系新興を説いて、この『光の国』を興した。
自身は結婚したことはないが、子どもと家族に幸福をもたらす、という教義だ。
実際に中嶋と話して、子宝に恵まれたり幸せになったと声をあげる信者は多い。
特に今回の儀式に招かれるような熱心な信者からは、絶対的な信頼を集めていた。
そんな教祖直々から、
「あなたは立派に、役割を果たしましたよ」
声をかけられた男は、一瞬驚いたように身を固める。
でもすぐに、自分の不遜さを恥じるように慌てて視線を伏せ、
「いえ、そのような……」
首を振る。
男の殊勝な態度に、中嶋は満足気にうなずく。
「そんなに謙遜しなくても良いのです。あなたには本当に期待できますよ。これからもよろしく頼みます、ヴォルコフ同士」
「はい……、教祖さま」
ゆっくりと顔をあげた男は、茶色い髪に茶色い目をした有坂龍一。
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