2.双頭の共命之鳥《ぐみょうちょう》

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2.双頭の共命之鳥《ぐみょうちょう》

やがてホールにいる客人に食事が振る舞われ始めると、龍一はひとり調理室に戻ってきた。 シャツの袖をめくって、使い終えたグラスを洗いだす。 しかし無言で入ってきた人の気配に気づき、ピクリと腕を止めた。 だがすぐに、また思い直したように何ごともなく手を動かし始める。 「……おい」 結局、龍一の無視に堪えきれず、先に声をかけたのは、侵入者の方だった。 「何の茶番だよ」 ちょうど洗いものを終えた龍一は、今度は専用のクロスを使ってグラスを磨く。 その間、侵入者のことを振り返りもしない。 「おいってば!」 耐えかねたように声を荒げて龍一の肩を力任せにつかめば、 「お前こそ、なぜ来た」 ようやく龍一は顔をあげて、侵入者の顔を見た。 「神に救いを求めるなんて、お前らしくないんじゃないか高広」 入ってきたのは秋場高広だ。
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