2.双頭の共命之鳥《ぐみょうちょう》

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「こんな場所に来るなんてよっぽどだな。女を妊娠でもさせたか?」 龍一は可笑しそうにクツクツ笑いながら、グラス磨きを再開させる。 「残念だがここでは、綺麗に別れる方法とか、次の幸せを与えるなんて方法も見つけられない。いっそのこと諦めて結婚したらどうだ。そう悪いものでもないぞ。 どっちにしろ、さっさと帰って、まずは女に土下座でもしろ」 「勝手に話をつくってるんじゃねーよ」 戯れ言を口にする龍一に、高広は声を荒げる。 「俺のことはどうだっていいんだよ。とにかくお前さんに聞きてーのは、お前さんがここにいながらアレを見て、それで何だって好き放題させておくのかってことだ。あんな茶番劇をよ」 「茶番劇?」 「ああ、それ以外の何物だっていうんだ。迦陵頻伽の詩とかいう、あの人殺しの儀式が」 龍一は、 「待っててくくれ。これを先に済ませてしまう」 などと言いながら、高広から視線を外す。 「グラスの水気は早く取らないと、後が面倒なんだ」 「ごまかしてんじゃねぇよ」 高広は再び、龍一を振り返らせた。 「あんたは、あの人殺しを止めるために、ここに潜入してるんじゃねーのかよ」
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