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見た事のない原色の民族衣装に、羽根飾りの帽子を被っている。
その容姿はまだ若干幼く、歳の頃は十代前半だろう。
「えっと、どうもこんにちは。
どちらさま?」
「しゃ……喋った?!」
「はいまあ、喋れますけど」
「ななっ……!?
……い、いや! やっぱりそうなのね!
この聖域の主は知能を有する古竜種(エンシェント・ドラゴン)だったんだわっ!」
眼を円くしていたその少女が身を転ずるよう、途端に草の上を転げ回った。
多分、一回転で華麗に立ち上がるつもりだったのだろうが、勢い余ってゴロゴロとしていた。
やっとの事で立ち上がり、少女こちらにビッと指を突きつけた。
どこか垢抜けない風情であるが、勝気さと愛らしさが相まって魅力的に見える。その面立ちも美人と言って障りないかもしれない。
「あ、あたしの推測通りね! 驚くまでもないわ! フン!」
なぜかドヤ顔をかまして、こちらを見下すように構えている。
ちょっと癪だったので、寝そべっていた状態から四本足で立ち上がった。そうすると目線は彼女の頭より上にきた。
それで少女は、今度はこちらを見上げるようにしてそのドヤ顔を引き攣らせていた。
「それで君は?
こっちに来てから人の姿を見たのは初めてなんだけど、他にも沢山いるの?
どこから来たの? この森にも人間の集落があるの?」
若干興奮していて、食い気味に彼女に質問を迫ってしまった。
「何言ってんのよ! 聖域に人間が住めるはずないでしょ!
世界の始まりから存在している古竜のくせに物を知らないわね!」
「そうなのか。
話、いろいろ聞かせてくれないかな」
「はあ……? 何だかヘンテコなドラゴンねぇ……。
――って! そんな事はどうだっていいのよ!
大人しくあたしと契約を結びなさい! ドラゴン!」
「……契約?」
俺は脈絡なく出てきたその単語に首を傾げてしまう。
「契約と言ったらモチロン! 〈ジェノスの契約〉の事よ!」
「ジェノス?」
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