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 帰りの電車の中でふと子供の頃を思い返した。  幼い頃は身体が弱く病気を患いがちだった。その影響もあって家に閉じこもっていた。  好きなことは絵本を読むこと。もうひとつは折り紙や小物を作るのが好きだった。一度集中すると時間を忘れるくらい没頭した。  ものを作っているときは自分でも驚くほど集中力を発揮した。ことに勉強には働かなかったが、図画工作や家庭では自分の右にでるものはいなかった。風景模写をしても誰より細かい部分まで描ききっていたし、裁縫も一部分のほつれなくエプロンを仕上げた。  幼いときから小物をつくったりしているせいか、手先が器用なのもある。しかしやはり手を動かしてものを作るということにわけもなく没頭するのだと思う。ものを作っていると完成形が徐々に見えてはやく完成させたいと気持ちが逸ってくる。それと同時になるべく納得のいくものを、と自分のおぼろげな想像に近しいものを望んでいた。  矛盾するようだがその気持ちがない交ぜとなって突き動かされるようにして手を動かす原動力になっていた。だから比較的一人ですごすことが多かったように思う。     
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