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 高校は趣向を変えて美術部に入部してみたのが失敗だった。  わたしは絵の基本などを知らず、自分で工夫して描くというのができなかった。周囲が現実にはあり得ない幻獣や天使、青いハイライトをかけた風景画を見てわたしは意気消沈した。わたしのやっていることは模倣にすぎず、自らなにかを生み出すことができなかった。よく作る小物も、現実にあるものを真似して作ることがすべてだったからだ。  部活は半年間ほどしてほどなくやめた。  そのあとは比較的普通に過ごし、友達と一緒に普通の高校生活を楽しんでいた。とくに読書家のグループに入れたのが功を奏した。昔懐かしい物語に没頭する感覚を思い出して、気がつけば深夜になっていてあわてて就寝することがままあった。  そのうちに友達の一人に彼氏ができ、周囲はそれをからかうという遊びが毎日のように行われた。からかわれた友達も照れたように笑いながらもまんざらではないようだった。それをみて笑いながら、すこし羨む気持ちが生まれたのもたしか。  残念ながら高校在学中にそんな機会が訪れることはなかったが。  しかし思ってもみないこともあるものだった。     
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