第4章

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一日経ち、サトリは執務室へ赴きグレン団長へ謝罪をしに行った。 グレンがこんなに声を上げるところを聞いたことがない、と後に同室にいたカインが語ったぐらい珍しい光景だったらしい。 ジャンから言われた通り、こってり絞られ落ち込むサトリにカインが近寄り、グレンはサトリを心配し、一睡もせずに今までここで待っていたんだ、という言葉にサトリは号泣し何度も謝った。 そんなサトリの様子にグレンも号泣し、2人して長い時間泣き続けたのだった。 なかなか執務室から出てこないサトリを心配したジャンとアルベルトが 恐る恐る中をのぞくと、困惑して立ちすくんでいるカインと目が合い、 泣いている2人を必死に宥めるようと尽力することになった。 ようやく泣き終えた2人と宥めていた2人にカインは温かい紅茶を振る舞った。 泣いて水分がなくなったサトリの身体に紅茶はじっくりと染みわたっていく。 「団長、あの、ご心配かけた挙句こんなこと言うのはどうかと思うんですけど」 「あー、もうなに言われても驚かんよ、サトリ」 ばつが悪そうに頷いたサトリは盗賊たちをこの騎士団で働かせて欲しいと懇願した。 悪いことをしてきたし許すことのできないことも今までしてきたのだろうが、今は頭であるホークアイとともにその行いを反省してまっとうに生きると言ってくれた。 「万年人手不足って言ってましたよね。 体力はあるし腕もいいですよ。器用だし」 「何を言われても驚かないと言ったが、さすがにそれには驚いた」 頭を抱えるグレンにアルベルトとジャンもため息をつく。 サトリ自身が先日、死にそうな目にあったのは紛れもなく盗賊たちのせいだと言うのに。 カインもさすがに擁護できず、その場に立ち尽くしていた。 「サトリ……、こればっかりは俺が決めることでもないし、 人事に言って上に通してもらわないと……。 しかし盗賊採用する騎士団っていうのも不思議な話だが」 グレンが困っていると執務室の扉を叩く音がした。 「どうぞ」 グレンが一言返すと失礼、とアフェリア姫の側近であるグレハムが入って来た。 「やあサトリ、このバカ弟子が。」 秀麗な顔ににっこりと笑みを浮かべるグレハムだが額には青筋を浮かべていた。 蒼ざめるサトリは立ち上がり何度も謝った。 先程まで泣いていたため真っ赤に泣きはらした目で謝られては、さすがのグレハムも今この場でこれ以上怒るわけにはいかなかった。 グレハムがグレンを横目で見ると苦笑され、頷かれた。 その姿にため息をつき、仕方ないな、とサトリの頭を撫でる。 「大体の話はホークアイの方から聞いたよ。 全く、お前は本当に手がかかるやつだなあ」 「ごめんなさい、師匠。ホークアイさんたちは?」 あの後、一連の騒動は騎士団領で起きていたため、ホークアイ達とユーリはこの騎士団に保護されていた。 ユーリは竜へと変化した反動で知恵熱が出てしまい、未だ眠りについていた。 「ああ、身体が鈍ってしまうと修練場で汗を流していたよ。 あとユーリの熱だが、少し下がってきていたからそろそろ目を覚ますと思うぞ」 「よかった、ユーリ」 胸を撫で下ろすサトリにグレハムは微笑んだ。 「ま、ちょっとサトリの話を聞いていたんだがな、俺もいい案だと思う。」 「話って……もしかしてここ、騎士団領で雇ってくれるっていう話ですか?」 「そうそう、いやあ、なかなかいい話だと思うんだよな。 修練場の様子も見てたんだが、体力あるし動きもいい。俺から話しておこう」 カインから出されたお茶を丁寧な所作で飲みながらグレハムは微笑んだ。 グレハムの言葉にサトリはお礼を述べ、ユーリの容態が気になるので、と 一礼し執務室から出ていった。 「全くあいつは……、グレハムさん、本当にその話通ると思っているんですか?」 ジャンの言葉にグレハムは当然、と頷いた。 「それにうちは万年人手不足だからな。アフェリア姫も盗賊が来た!って 喜んでたぞ」 「……騎士団ってよくわからないです」 アルベルトの言葉に一同は力強く頷いたのだった。
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