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「勝手に敵対意識を持たれちゃってたんですね…。お疲れ様です」
心底気の毒そうに佐藤さんが労う。
「でも、一昨年私が結婚した事によって、ようやくそのターゲットからは外されたみたいなんだよね。『あ、これでもうこいつが井上君に手を出す事はないな』っていう風に。実際、職場の皆さんに結婚報告をした際、すっごく上機嫌に『おめでとう~』なんて言われたりしたしね」
「っていうか、田中さんは最初から井上主任のことは別に何とも思ってなかったんですよね?」
「うん。旦那とは大学の時からの付き合いだし。一瞬たりとも主任に目移りしたりはしなかったし、彼の方だって、私の事はただの同僚としか見てなかったよ」
「長いお付き合いの末にご結婚に至ったんですねー」
「無駄にダラダラ続いちゃって、そのタイミングを掴むのがむしろ難しくなってたんだけど、『お互いもう30になるし、いい加減籍でも入れとくか』って言われて。夢もへったくれもないプロポーズだけどね」
田中さんは苦笑しつつ続けた。
「まぁとにかく、勝手に邪魔者認定していた私が既婚者になった事で、師岡さんは内心かなりルンルンしていたと思うんだ。だけどホッとしたのも束の間、今度は須藤さんみたいな超絶美人が入社して来て、よりにもよって井上さんのチームに入っちゃったもんだから、私の時とは比べ物にならないくらい戦々恐々としたと思うんだよね」
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