プロローグ 毒の世界

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もくもくと煙突から立ち上る紫色の煙。 まさに竜のように立ち上るその煙は、なにやら重々しい設備をまとっている大きな工場から止め処なく放出されているようだ。 その工場の中では、数多の人間達がうごめいていた。 宇宙服のような皮膚を一切出さない装備を身に着けた、数多の人間達がうごめいているのだ。 工場は何かを作るためのものだ。 その工場ももちろん作っている。 他の生物を滅ぼすための兵器とやらを。 毎日毎日休むこともなく、人間と機械の息の合ったコンビネーションにより兵器を作っているのだ。 工場は毎日もくもくと紫色の煙を放出している。 その工場の付近に二羽の鳥が現れた。 体中が真っ白に光る美しい鳥。 おそらく夫婦なのだろう。 とても仲良く飛んでいる。 その鳥の目の前に紫色の煙が現れた。 その二羽の鳥はその煙に触れた瞬間、地面に落ちて動かなくなった。 どうやら、紫色の煙は生物に有害であるようだ。 よく見ると、その工場の付近10kmには草木一本すら生えていない。 しかし、その工場は今日もただ兵器を作り続ける。 もくもくもくもくと煙を上げながら。 ただ、黙々と。
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