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コンビニ店長は狼男でした
灰色の髪に、咥え煙草。腕まくりした部分からのぞく刺青。アスリートかと見紛う程の鍛え抜かれた体躯。レジ裏に置かれた椅子に腰掛け、成人向け雑誌を読み耽るその男は、パッと見完全にヤクザだった。いや俺が知らないだけでモノホンのヤクザかもしれない。
「おい、コンビニ店長がヤクザって。客寄りつかなくなるんじゃねーの」
ツナマヨおにぎりにタラコマヨおにぎり、ノンシュガーヨーグルト、ミルクたっぷりミルクティー。それらの商品をレジに置くとヤクザ店長が顔をあげた。
「お前こそ、その牛乳尽くしよく飽きないな。乳離れができてないのか?」
「24の男が乳離れできてないとか恐怖以外の何物でもねえだろ」
「確かに」
ヤクザ男は煙草を咥えたまま口元だけで笑う。
ーーぴろりろりん♪
来店の音楽が鳴る。一瞬、ヤクザ店長の視線が入口に向けられた。それからまたすぐ視線が戻ってくる。
「都会はコンビニ戦国だからな。客は元々少ない」
「マジで大丈夫かよ・・来週潰れますとか言われたらわりと」
ショックなんだけど、と言いかけて口を噤む。これだけ悪態をついておいてあれだが、このコンビニが潰れるのは困る。会社から近いし、色々便利だし、…。
「…」
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