13人が本棚に入れています
本棚に追加
「んっと、これがあれで、あのビルがこれで」
避けつつスマホの画面でマップ検索を行い、実際の建物と見比べてみる。やはりわからない。
どんっ
ふと肩に衝撃が来る。何事かと思ったときにはすでに遅く
ブロロロロ
去っていくバイク野郎の腕には見たことのある財布が握られていた。
「!!!…お、俺の財布!!」
我に返り、バイクを追いかけようと走り出す。だが、
ザッバアアアア!!
バケツをひっくり返したような豪雨に襲われた。
「はああ???」
これが噂のゲリラ豪雨か。財布をとり返そうにも、あまりの雨の強さに一歩先の景色すら見えない。
「くそっ!!」
まさに泣きっ面に蜂。さっきは都会の洗礼といったが、ただ単にその日の俺が不運だったのかもしれない。だが俺を絶望に突き落とすには充分な状況で。
(はあ、帰りたい・・)
今後の都会暮らしを憂い、雨で全身びっしょりに濡れながら、項垂れる。
「ほら」
ふと、雨が止んだ。いや、雨音は依然と続いている。肌に打ち付ける雫がなくなっただけ。おずおずと顔を上げる。
「108円な」
灰色の髪に咥え煙草、タンクトップからはみ出す腕から肩にかけての刺青。そんなヤクザのような外見の男が傘を開いて差し出してくる。
「え、っと・・」
最初のコメントを投稿しよう!