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「この路地を抜けた先のコンビニで店長をしてる」
そこまで言うと男はさっさと去ってしまう。
「え・・?」
意味がわからず、傘を握りしめながら立ち呆けること数秒。
「ふぇっきし!!」
肌寒さに負けてコンビニへと向かった。
これがヤクザ店長との出会い。この後、店長のコンビニでは色々とお世話になり、しかも会社からわりと近くにあると知った俺は、ほぼ毎日通い詰めるようになった。
「おっ今週はパスタ週か」
セール中という言葉に後押しされお気に入りである特製カルボナーラに手を伸ばす。ここのカルボナーラはコンビニのできにしておくにはもったいない逸品だ。
「おい」
すると、暇そうにしていたヤクザ店長がタバコ片手に近寄ってきた。
「なんだよヤクザ店長」
「大神と呼べ、追い出すぞ」
追い出すと真顔で凄まれそのあまりの迫力に息が止まる。だからその顔怖いんだって。やっぱヤクザだろお前。
「で、・・なに」
「乳製品ばっかじゃ体壊すぞ」
「なっ」
(そんだけ脅しといて普通・・・)
「や、野菜はなんかぱさぱさするんだよ。あと食った感じがしない」
「はっ好き嫌いか」
店長は俺の言葉を鼻で笑い、安売りされていた野菜セットに手を伸ばす。
「ほら」
「いらないって」
「100円でいいぞ」
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