プロローグ

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 突き飛ばされて、背中を木の幹に強く打ち付けた。  息が止まって、体が動かない。  目の前にドラゴンのスイカみたいな大きな目が来る。  目の下に並んだ鼻の穴は、黒豚の尻ほどに大きい。両頬からなまずみたいに長い髭がそよそよと動き、僕の前を行き来する。  耳の下まで裂けた口から、硫黄臭い、熱い息が吐き出された。  苦しくて息ができない。  こいつ、面白がっている。  猫がねずみをなぶるみたいに、僕の事をわざと加減してなぶって楽しんでいる。  そう気づいたら悔しくて、思わず右手を挙げて、覚えたての呪文を唱えた。 「ペンドラゴン、フルセンコイナ、ウビゲリーナ!」  僕の右手から光輝く呪文が瞬時に出た。  ドラゴンと僕を隔てるように天と地に向かって広がり、僕を守る・・・はずの光の壁は、出た瞬間からどろどろと溶けて、霧散した。 「キリアっ、お前にはまだ無理だ」  ドラゴンの尻尾のはるか後方で、つまり安全な場所から、西の村の人々の先頭に立ったマットーが叫ぶ。
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