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「あれは封印石だったの」
指差して、その子は言った。
「どかしちゃダメだったんだよ」
道路向かいの工場跡地にマンションが建つことになり、工事が始まった日、私は小さな女の子と知り合った。
「詳しいね」
白いブラウスに紺の吊りスカートという格好は小学校の制服のようで、7~8歳に見える。
彼女は利発そうな顔をしかめ、クレーン車で運び出される岩のような大石をにらんでいた。
「食べる?」
ミルク味の飴を差し出して話しかけると、その石の謂れを教えてくれた。
「昔ここでじっけんしっぱいして沢山死んだんだよ。祟りがあるからえらい人が封印したんだって」
亡き両親が買い求めた家で私も数十年ここに暮らしているが、そんな話は聞いたことがない。
「石どかしちゃったから、またはじまるよ」
何が?と聞こうと彼女の方を向くと、煙のように消え失せていた。
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